倉知眼科倉知眼科

diabetic-retinopathy

糖尿病網膜症とは?

糖尿病網膜症は、糖尿病において血糖値が高い状態が続くことによって起こる合併症で、三大合併症と呼ばれる代表的な合併症(網膜症、腎症、神経障害)の一つです。
糖尿病合併症の根本的な原因は、血液中で増えすぎた糖が血管や神経を障害することです。
そのため、全身のいろいろな場所で合併症が起きるのです。

資料提供:ノバルティスファーマ

糖尿病網膜症の有病率

日本における糖尿病網膜症の有病率は、糖尿病患者さんの約15 ~40% とされ、約 300 万人が糖尿病網膜症にかかっていると推定されています。
糖尿病網膜症は、年間約 3,000 人の失明を引き起こし、成人の失明原因の第2位、60~74歳では第1位となっています。

糖尿病網膜症の症状

糖尿病網膜症(以下、網膜症)は、糖尿病による血糖の高い状態が持続する結果、網膜にはりめぐらされている細かい血管(毛細血管)が壊れることで起きる病気です。
網膜症は血管が壊れていくことで進行し、初期には見え方に異常はありませんが、放っておくと、最悪の場合は失明に至ります。
ここでは網膜症の進み方について見てみましょう。

01. 単純網膜症

長い間、濃度の高い糖にさらされることで毛細血管が 壊れ始め、コブができたり(毛細血管瘤:もうさいけっかんりゅう)、出血したりします(点状出血)。
また、壊れた血管から血液や血液の成分(たんぱくや脂肪など)が漏れ出します。

02. 増殖前網膜症

血管の障害が繰り返されることで血管壁が厚くなって、血管が狭くなったり、詰まったりして(血管閉塞:けっかんへいそく)、血液が網膜に流れなくなります(虚血:きょけつ)。

03. 増殖網膜症

虚血になると、網膜では新しい血管が作られ(新生血管)、硝子体(しょうしたい)まで伸びて、血液や酸素を取り込もうとします。
新生血管はもろく、壊れやすいので、硝子体で出血を起すこともあります。
また、硝子体内にできた増殖膜が 収縮して硝子体と網膜を癒着させ、網膜を引っ張り網膜?離(もうまくはくり)を引き起こすこともあります(牽引性【けんいんせい】網膜剥離)。

糖尿病網膜症の治療

糖尿病網膜症(以下、網膜症)の治療法には、薬物による治療法と外科的な治療法(レーザー治療や硝子体手術:しょうしたいしゅじゅつ)があります(詳細は 糖尿病黄斑浮腫の外科的治療法 をご参照ください)。
病気の進行によって治療法は異なり、早期に治療を始めるほど負担の小さな方法で視力障害や失明を防ぐことができます。

01. 正常~単純網膜症(早期の網膜症)

血糖コントロールや、高血圧の治療など内科的治療を行い 、状態によってはレーザー光凝固療法(ひかりぎょうこりょうほう)を行います。
それによって、病気の進行を阻止(そし)したり遅らせたりすることができます。

02. 増殖前網膜症~増殖網膜症(進行した網膜症)

血糖コントロールや、高血圧の治療など内科的治療を行い 、状態によってはレーザー光凝固療法(ひかりぎょうこりょうほう)を行います。
それによって、病気の進行を阻止(そし)したり遅らせたりすることができます。

糖尿病網膜症について詳しく動画解説

糖尿病黄斑浮腫とは?

糖尿病黄斑浮腫(以下、黄斑浮腫)は、糖尿病網膜症の合併症として黄斑部がむくむ(浮腫)病気です。網膜症の病期に関係なく発症し、その進展に伴って発症の危険性も高まります。
黄斑浮腫は最初は小さなものですが、やがて黄斑の中心部にまで浮腫が及ぶと、著しい視力障害が生じます。

糖尿病黄斑浮腫の自覚症状

黄斑浮腫では、視野の真ん中が影響を受けます。
進行に伴ってさまざまな症状があらわれますがいちばん多くみられるのが、かすみ眼です。
そのほか、視力の低下、変視症、コントラスト感度低下などがあります。

糖尿病黄斑浮腫の治療

薬物療法

VEGF 阻害薬(眼内への注射)
 糖尿病黄斑浮腫は、網膜内の毛細血管から血液成分が漏れ出すのを促す VEGF(血管内皮増殖因子:けっかんないひぞうしょくいんし)という物質によって引き起こされます。
 VEGF阻害薬療法は、このVEGFの働きを抑える薬剤を眼内に注射することで 血管成分の漏れを抑制する治療法です。

ステロイド薬は、炎症を抑えたり血管から水分が漏れ出てきやすい状態を改善する物質です。
この薬剤を眼球の中(硝子体腔:しょうしたいくう)などに注射することにより、黄斑浮腫を抑えます。

外科的治療法

黄斑浮腫に対するレーザー光凝固術は、細小血管や毛細血管瘤(もうさいけっかんりゅう)から血液成分(水分やたんぱく、脂肪など)が漏れ出るのを防ぐ直接光凝固と格子状光凝固があり、単独または併用で行われます。

直接光凝固

網膜毛細血管にできたコブ (毛細血管瘤)や血液成分が 漏れ出ている部位にレーザー光を当てて、焼き固めることで、出血や血液成分の漏出を防ぎ、黄斑浮腫を改善させます。

格子状凝固

網膜の浮腫(むくみ)を生じている部分にレーザー光を当てる治療です。

黄斑浮腫の原因となる硝子体の網膜への牽引(けんいん)やたんぱく質(サイトカイン)を除去したり、 硝子体内の酸素分圧を高めて、黄斑浮腫を改善させます。

硝子体手術についてはこちらをご覧ください。